ヘルスコミュニケーション学は、医療・公衆衛生分野を対象としたコミュニケーション学です。日本国内では、医療コミュニケーション学、医学コミュニケーション学等と呼ばれることが多いのですが、英語圏ではHealth Communicationという言葉を用いるのが一般的です。医療・公衆衛生分野では、従来、技術細分化型(外科⇒胸部外科⇒心臓外科⇒小児心臓外科)の専門分化が主流でしたが、ヘルスコミュニケーション学は、コミュニケーション学という独自の理論、方法論を持った学問の医療・公衆衛生への応用となります。医療・公衆衛生分野での具体的なコミュニケーションの機会として、1)医療従事者・医療消費者間のコミュニケーション、2)医療従事者間のコミュニケーション、3)医療消費者間のコミュニケーションが主として考えられます。これらのコミュニケーションは、古くは対人で行われていましたが、現代では、各種のメディアを介したコミュニケーションの重要性が増しています。医療・公衆衛生の分野では、コミュニケーションが重要な課題として認識されるようになっています。医学研究の成果は、それが一般市民に分かりやすく正確に伝えられることによって、はじめて健康行動や医療行動の変容につながります。このために分かりやすく正確に伝えるということが非常に重要です。更に近年では効果的な情報の『伝え方』としてのコミュニケーションだけでなく、関係者がお互いに伝え、受け取る、双方向のコミュニケーションへの関心も高まりつつあります。医療機関では患者との良好なコミュニケーションが患者満足度の向上、紛争の予防・解決に結びつくという認識が広まっています。また職員のやる気・能力を高め、組織内の紛争を防ぐためにもコミュニケーションが果たす役割は重要です。 近代医学は、19世紀に細胞レベルの生物学を基礎として始まり、現代では分子生物学に発展して医学研究を支えています。20世紀には、統計学的・疫学的手法を用いて、ヒトを対象とした治療法・診断法等の厳密な評価とこれに基づく医療が確立しました(EMB=Evidence-Based Medicine)。21世紀には、ヘルスコミュニケーション学を医療・公衆衛生学のための3本目の柱として確立していくことが重要な課題であると考えています。
|
|