河口浩之1) 、木尾哲朗2)
1)広島大学病院 口腔総合診療科
2)九州歯科大学
杉岡英明1)
1)医療法人M.コラソン ほほえみ歯科クリニック 理事長
歯科医療においては専門的知識や技術に加え、患者の不安を軽減し信頼関係を構築するコミュニケーション能力が不可欠である。 本研究では、広島デンタルアカデミー専門学校および九州歯科大学において実施した「デンタルコミュニケーションメソッド」に基づく教育実践を報告する。 グループワークを中心とした体験的学習により、学生は「聴く」「伝える」「協力する」といった対話スキルを実践的に習得し、自己理解と他者理解を深めた。 講義前には自らのコミュニケーション力に自信がない学生が多く、45名中20%のみが「コミュニケーション力はある」と回答していたが、講義後には98%が「コミュニケーション力が向上した」と回答した。 変化として、コミュニケーションを才能ではなく技術として捉える認識の獲得、自己肯定感の向上、相手の感情を考慮した態度変容が確認された。 また、言語化と解釈の過程における情報変換により、完全な相互理解は構造的に不可能であるという視点を提示し、歯科医療における誤解の生じやすさを論じた。 以上より、本教育は歯科医療者としての基盤形成に寄与するものであり、今後は臨床現場との連動や長期的効果の検証が課題である。
塚本千草1)
1)DHマネジメント協会
歯科医療はキュア中心からケア中心へと移行しており、歯科衛生士には長期的関与を通じた健康支援が求められている。 そこで、歯科衛生士が実践する信頼関係構築型コミュニケーションに着目し、実症例の紹介とともに実践枠組みの提案を行った。 初診患者対応において、主訴の背後にある感情や価値観を共感的に理解し、患者の語り(ナラティブ)を重視することで、自己開示が促進され、その後の治療説明や予防提案が受け入れられやすくなるプロセスが確認された。 さらに、患者自身の意思決定を支援するコミュニケーションにより、健康行動の定着が図られた。これらの実践を整理し、「共感的理解」「ナラティブの把握」「意思決定支援」の三層構造からなる枠組みを提案した。 本枠組みは、歯科衛生士が口腔内管理にとどまらず、全身健康を支える伴走者として機能するための実践的指針となり得る。
大戸敬之1)
1)鹿児島大学病院 歯科総合診療部
歯科を含む医療におけるコミュニケーションは、患者の生活背景、文化的文脈、社会資源といった条件に照らし、専門知を生活言語に翻訳したうえで、患者が納得して選択し、 相互の協力のもとで実行できるように設計する営みとも言える。 しかし初学者は、コミュニケーションを技能や経験に依存するものと捉えやすく、学びの手がかりを持ちにくい。そこで、複雑な現場を単純化しすぎない範囲で、初学者の入口として実務上の枠組みを提示する。 枠組みは、いわゆる三位一体脳の考えを神経生理学の厳密モデルとしてではなく、臨床実務での道具として位置づけ、三つのモードで状況を捉える。対応は言語的介入に限らず、 非言語的な振る舞い、情報量や順序、環境調整を含めて組み立てる。 枠組みは現場で微調整しながら自分の型へ昇華していくことが重要である。ただし、コミュニケーションは重要だが臨床における万能解ではない。 知識や技能と噛み合って初めて成果に結びつくため、医療者はコミュニケーションだけですべてに対応しようとしない姿勢が求められる。
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