藤本 徹 1)
1) 東京大学
ゲームの可能性は、娯楽の枠を超えて社会課題の解決にも向けられるようになってきた。その代表的な概念が 2000年代に入って普及した「シリアスゲーム」である。これは、教育、医療、福祉、環境、政治などの領域にお いて、ゲームを通じた行動変容、知識獲得、意識啓発などを目的とするものである。こうした応用が国際的に広 がり、特に医療分野では「 Games for Health」という枠組みのもとで 関連領域の 融合的実践が展開された。本稿で は、シリアスゲームの研究動向を整理した上で、医療分野での実践的応用事例を紹介し、今後の展望について考 察する。
石井 洋介 1)2)3)4)5)、 宮﨑 海理 1)2)、村松 圭司1)2)
1) 医療法人社団おうちの診療所
2) 株式会社 omniheal
3) 株式会社エンタケア研究所
4) 高知大学医学部デジタルヘルス学教室
5) デジタルハリウッド大学大学院プレイフルヘルステックラボ
近年、医療分野における行動変容支援や健康コミュニケーションの手段として、シリアスゲームの活用が注目さ れてい る。特に、従来の啓発型アプローチが届きにくい層に対して、ゲームのもつ没入性や感情的な関与を活かす ことで、より主体的な行動喚起を目指す実践が進んでいる。本研究では、筆者が開発・運営してきた 2つのシリア スゲーム、「うんコレ」と「エンディングゲーム」を取り上げる。前者は排便観察を通じて大腸がん検診への関心を 喚起するゲーミフィケーション要素を含むモバイル RPGゲームであり、後者は終末期医療をテーマにしたすごろく 型のボードゲームである。両事例について、設計思想と理論的枠組み、実証結果、参加者からの評価、そして倫理 的課題を整理し、行動変容支援手法としての可能性と限界について考察する。
荘子 万能 1)
1)BonBon株式会社
リアルタイム性と拡散性に優れたソーシャルメディアを用いた情報発信の重要性が増している.東日本大震災やCOVID-19を機に,多くの機関がソーシャルメディアを重要なインフラとみなし,一般市民への情報発信に活用している.しかし,様々な属性(年齢,性別など)の人々の目に留まるような情報発信は難しい.そのため,リスクコミュニケーションに配慮した情報配信を実現するために,ソーシャルメディア上での情報発信の工夫が求められている.我々は,マイクやスピーカーの指向性のアナロジーで,情報発信者が想定する受信者像を「指向性」と呼び,どの対象(年代や性別など)に向けて発信されたのかというメッセージの「指向性」を言語的な特徴をもとに推定する.具体的には,Twitter(現,X)から政府や公的機関等のアカウントによるツイートや,雑誌のようにターゲット層が明らかなアカウントによるツイートを収集し,クラウドソーシングにより得られた回答に基づく属性ラベルを付与し,指向性ツイートデータセットを構築した.このデータセットを用いて,ツイートがどの対象(年代や性別など)に向けて発信されているかを推定するモデルを構築し,そのモデルの性能やラベル付けされたツイートの分析結果を報告する.
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